ベトナム人マネージャーの育成に問題を抱えている
日系企業 5つの特徴

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ベトナム進出日系企業の重要課題「マネージャーの育成」

ベトナム進出日系企業にアンケートを実施すると「マネージャーの育成」が常に課題の上位にあがります。またコロナ渦の影響もあり駐在員の削減、また制度そのものを見直す企業も増えており優秀な現地マネージャーの育成や獲得の重要度は増してきています。


しかしながら多くの企業がベトナム人マネージャーの育成(または採用)に苦労しており、期待している成果をあげられていないのが現状です。
本記事ではベトナム日系企業のマネジメント支援を行っている当社がこれまでの経験を踏まえ現地マネージャーの育成で問題を抱えやすい企業の特徴を5つにまとめてご紹介させていただきます。問題が起きやすいケースを把握すること今後の現地マネジメントの参考にしていただければと思います。

1.マネジメントに対する期待値がずれている

1つ目の特徴はシンプルに「期待値がずれている」ことが挙げられます。これは日本人経営層が達成してほしいと考えている業務成果と現地マネージャーが自分の仕事だと思っている成果の地点がずれているということです。

この問題は経営層、マネージャー間だけでなく部下が期待している成果をあげられていないとき最初に疑うべき問題の本質です。例えば上司は「利益を上げることを期待している」のに部下は与えられた「作業をこなすこと」を自分の仕事だと認識しているといったケースです。ご自身がマネージャーにとってこれは当たり前だろと思っていることは必ずしも部下にとってのあたり前ではありません。

この問題は視座が違えば国籍に関係なく常に起こることであり、それに加えチーム内に文化差がある場合はリーダーシップに関する考え方も異なり互いの成果地点に相違が生まれやすくなります。
ベトナム人材が考えるマネージャー像と日本人経営層が考えるマネジメントの理想像がずれているケースは多々見受けられますので注意が必要です。期待通りにならないと感じた場合「言葉にして明確に伝える」ことは異文化コミュニケーションの基本の基本です。

具体的に行う対策としてはコミュニケーションをとりながら明確に期待している業務を告げること、そしてそれらを評価項目(昇格、降格条件も含む)として明文化することになります。

2.マネージャー研修を実施するだけで経過測定がない

2つ目は研修を行っているが経過測定を行っていないケースです。営利組織が提供する研修機会とは基本的にはゴール(期待する成果)があってそれを補うための能力開発であることが理想ですが、成果に至るまでの過程を確認する仕組みがなければ研修の効果を十分発揮するのは難しくなります。

つまり研修で学んだことが実践できているかを研修後に定期的に振り返る機会を作らなければマネージメントのような体得を必要とするスキルの場合、研修成果は極めて属人的なものとなり「育成の仕組み化」には至りません。知っているとやっているとでは大きな違いです。

また研修効果が弱いと感じる場合、研修満足度や研修会社のアンケートには十分注意しましょう。組織における研修の満足度とは受講者と経営層の両者が判断すべきで受講者の「受講後アンケート」での満足度は研修効果を測定しているものではなく、あくまで研修時間内の受講者満足度を測るものです。

しかし企業視点での研修満足度とは研修後の効果(成果)のことであり受講後アンケートの良い悪いは直接的には関係ありません。そのため研修後の効果については成果地点、経過測定方法などは自社で明確にしておく必要があります。

余談ですが研修時間内の満足度を上げるためにはテクニックがありますので研修満足度◯%と謳う研修会社のキャッチコピーには注意が必要です。

3.メンバーシップ型のトップダウン経営を5年以上続けている

3つ目はマネジメントの構造的な問題からマネージャーが育っていないタイプです。日本型のメンバーシップ型雇用(勤務年数によって組織内の順列が決まる)に加え、駐在員のトップダウン経営が長く続いている企業によく見受けられます。

このタイプは一見
安定しているようにえますが、トップはマネージャーに対して不満がありローカル化を進めるにあたって現地任せられるマネージャーが育っていないという問題を抱えています。特に現地駐在員の任期が決まっておらず長期にわたってトップダウン経営が行われているとこの問題が発生しやすくなります。

日系企業はベトナムでもメンバーシップ型の雇用形態を取る場合が多く、実力とは関係なく長期で勤務する従業員を昇格させマネジメント能力とは関係のないベトナム人従業員が上位職についているケースがよくあります。これは日本でも同様ですが特にベトナムの権威主義的なリーダーシップスタイルと日本型のメンバーシップ雇用が掛け合わさると離職率が高く従業員満足度の低い組織になりやすくなりますので注意が必要です。


トップダウン経営はベトナム組織との相性もよく特に進出初期のフェーズでは効果的なマネジメント手法です。しかし長期で行うと組織の弱体化にもつながることがありますので組織が安定してきたら
数年先を見据えてマネージャー育成の仕組みを構築する必要があります。

4.マネジメント能力とは関係のない配置を行っている

マネージャーの人選で日系進出企業が大きな失敗をするケースは①日本経験がある②日本語が話せる③日本人であるというマネジメント能力とは何の関係もない基準でマネージャーの人選を行っているケースです。

①で多いのは日本での就労経験があるベトナム人材を現地の管理職や子会社社長に置いている場合。中小企業で多いのが技能実習生をベトナムでマネージャーにおくパターンで冷静に考えれば何のマネジメント経験もない一般社員を急に子会社社長にすることなど滅多にあることではありませんが実際にこのケースはよく見受けられます。

②も同じであり日本語ができる事とマネジメント能力とは何の関係もありません。しかしながら日本語ができることで日本人駐在員との距離が近くなりそれだけでいつの間にか管理職についているケースがあります。特にいつの間にか通訳が影響力を持ち、組織内での立場が強くなっている場合は問題が起きやすくなるので気をつけましょう。外資企業で発生する大きな問題は通訳が絡んでいるケースが非常に多いからです。

③も同様で日本人だからという理由で現地マネジメントを任せているケースも注意が必要です。進出企業のマネジメント課題の7-8割の問題は文化差ではなく役職のレイヤーギャップで生まれています(本社の課長が子会社で社長の仕事をするというケース)。また現地採用の場合、日本人は前職でも管理職についている場合が多く、経歴には「現地でのマネジメント経験あり」と記載されており進出初期には心強く思えますがどのような人物なのかは面接で慎重に見極める必要があります。

対策としては各レイヤーごとの定性・定量的な評価基準を明確にすることで役職に対して求められる能力と成果を明確にすることで名ばかり役職を作らないことになります。

5.マネージャーを育成する仕組みがない

マネージャーの育成についての話をすると海外子会社のマネージャーを育成する必要があるかという質問を頂きます。結論をいうと企業の現実的な存在目的、またはマネジメントスタイルによって異なる、という回答になります。完全なジョブ型雇用、または成果主義で人材流動性を意図的に高く維持し、採用優位性(相場の倍以上の給与)があり解雇も容易である場合、またはバイアウト前提で企業寿命よりも短期で業績の売上トップを上げることがゴールであれば育成を重視する必要はないでしょう。

しかしながら多くの日系企業は先ほど申し上げた通りメンバーシップ型雇用を重視し事業の持続性を重視しているため上記のケースにはあてはまりません。またどれだけ高いマネジメント能力を持っていても外資の場合、子会社経営層は本社とのコミュニケーションを必要とするので本社理解や異文化コミュニケーターとしての能力も必要となり全く育成が必要ないという人物を採用するのは現実的ではないでしょう。

またマネージャーの育成を行なっている企業でも育成が場当たり的で体系化できておらず属人的な施策となっているケースが多く見受けられます。先ほど申し上げたトップダウン型の経営とも関係しますが海外子会社の場合は駐在員任期が決まっていることが多く、それが原因で短期的かつ属人性の高い経営がなされ現地従業員のモチベーションや信頼を失っているケースが多々あります。そういった意味でも海外進出企業は本社が主導し、グループ全体で育成だけでなくマネジメント全体を「仕組み化」することが非常に重要です

 

ベトナム人マネージャーの育成に問題を抱えている企業の特徴 まとめ

  1. マネジメントに対する期待値がずれている
  2. マネジャー研修後の成果/経過測定がない
  3. メンバーシップ型+トップダウンを長く続けている
  4. マネジメント能力とは関係のない配置を行なっている
  5. マネージャーを育成する仕組みを作る

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